第1章で、自社のことを調べました。ここからは、マーケティングの全体像を学びます。まず、「マーケティングとは何か」です。マーケティングという言葉は知っていても、それがどういうものなのかを説明できる人は少ないのではないでしょうか。
そこでまず覚えておきたいのがマーケティングの理想形です。世界的に有名な経営学者であるピーター・F・ドラッカーは、著書『マネジメント』の中で、「マーケティングの目的は、セリング(売り込み)を不要にすることだ」という趣旨のことを述べています。
セリングというのは「営業活動」のことです。セリングを不要にするというのは「商品を発売した途端に多くの人が殺到し、売り切れてしまうような状況」と考えてください。何もせずに売れる、これがマーケティングの理想の形なのです。
とはいえ、ほとんどの商品やサービスが発売した瞬間に飛ぶように売れるなんていうことはありません。地道にチラシを配布したり、展示会に出展したり、テレアポをしたり、Web広告を出したり…様々な営業活動があって初めて売れるものばかりです。
しかし「売りやすさ」には明確に違いがあります。例えばタクシー広告やテレビCM、YouTube広告がたくさん流れている商品であれば、「この商品見たことある!」「タクシーで見たよ」と言われ、営業もスムーズに行えるでしょう。逆に初見の商品であれば、営業マンは1から説明しなければならず、買ってもらうハードルも高くなります。
たとえば、ギフトに強い架空のお茶屋さん「はなまる茶房」の「飲み比べギフトセット」を、SNSや百貨店の催事で見かけたことがある人には、「あのお茶ですね」と、説明が少なくて済みます。まったく知らない人には、ブレンドの特徴から、一つずつ説明しなければなりません。知られているだけで、売りやすさが変わります(架空の例です)。

マーケティングの理想型は確かにセリングをなくすことではありますが、ほとんどの企業では営業をなくすことは現実的ではありません。現実のマーケティングの役割は「商品・サービスをより売りやすくすること」であると言えます。知らない商品よりも知っている商品の方が購入されやすいでしょうし、他社より値段が安かったり、高機能だったりすればより売れやすいのは想像できるかと思います。
顧客に購入してもらいやすくする活動、それがマーケティング活動であり、マーケティング部やマーケティング担当者に求められる役割です。
やってみよう
自社(または好きなお店)の商品を1つ選び、「より売りやすくする」アイデアを、3つ書き出してみましょう。書き出したら、それぞれが次のどれにあたるかを、書き添えます。
- 知ってもらう
- 選ばれる理由を作る(安い、高機能、安心など)
- 買いやすくする(近くで買える、すぐ買えるなど)
3つが、同じものに偏っていないかを、確かめてみましょう。
答えの例(はなまる茶房)
- 催事で試飲を配る(①知ってもらう)
- 「包装がきれい」を前面に出す(②選ばれる理由を作る)
- ギフト特集ページで、3,000円のセットを選びやすくする(③買いやすくする)